佐藤雄駿 二作目の小説「濁った月」を電子書籍で発表

佐藤雄駿の小説二作目となる「濁った月」を電子書籍で発表。
今回が初の長編小説となる。
表紙は、数々の有名アーティストとのコラボなどで人気は獲得しているライブペインティングパフォーマー/絵描きの近藤康平氏が担当。

「濁った月」販売ページ
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– あらすじ –
主人公、佐久間真一が意を決して告白をした相手、伏見百合江はバイセクシャルだった。さらに百合江にはすでに同性の恋人がいることも知らされる。それを了承したうえで、二人の交際は始まった。
不純で冷めた恋愛観しか持たなかった真一は、百合江に対し潔癖な感情を抱き、やがて身体的変化を感じ始める……。
静かに展開していく物語の独特な結末は読者の意表を突く。
プラトニック、性愛、性交渉、自慰、それらの谷底で沈む青年を描いたオルタナティブ青春小説。


− 佐藤のコメント −

「読まれたくない小説を書こう」
そう思ってこの小説を書き始めた。
もっと噛み砕いて言うと
「この小説を書いたと思われたくない」
そんな小説を書こうと思った。
処女作「悪魔の飼育」を発表した後、僕はむしろ消化不良に陥った。
悪魔の飼育を書き上げ、世に出すというかたちで手放したことで、そこからこぼれ落ちていたものが見えてしまった。
こぼれ落ちてしまった”それ”を書かなければいけないと思った。
人は多面的で、その多くを他者には見せない。
その当然の事実を、執拗に描写しようとした。
読者によってはこの小説を過剰に、そして、不快に感じるかもしれない。
主人公を作者である僕に重ね、読者は僕に嫌悪感を抱くかも知れない。
書き上げた後、読書において信頼を寄せている友人に読んでもらった。
「僕なりの青春小説です」
と言うと
「不気味ね」
と返された。
初めは人に読ませるつもりではなかった。
だって、読まれたくない小説を書くつもりで書いたのだから。
けれど、書き上げてからもう五年という年月が経った。
随分、昔に書いた小説だ。
ようやく今、程よい距離を持ってこの小説と向き合うことが出来る。
だからと言って、これを他者の目に晒すのも傲慢だと思うが、僕は開き直っている。
ただ、敏腕編集者との度重なる推敲が、作品としての完成度は保証しているはずだ。
僕は今、成仏させるような気持ちで、「濁った月」という小説を世間に晒すことにする。